マーブルの描き方


上の写真はS3-0の香水びんです。
われわれが「マーブル」と呼んでいるシリーズのうちの一品なのですが、どうやってこのマーブル模様を出しているのか、と訊かれることが多いので、作り方をちょっとここに記してみようと思ったのです。
例によってテキストオンリーですが、ご同業の皆さんなら、だいたいのところは理解可能でしょう。
ということでさっそく始めます。
まずはパーツ作りから。(一日では出来ないのです)
1) ポンテ竿に透きガラスを3度巻き
2) ピンク、白、ベージュなどの不透明色(5〜8色)を 1) に被せる
3) どろどろに溶かして振り回す
4) 直径2cmほどの太さに伸ばして徐冷炉に入れる
5) 冷めた 4) をダイヤソーで4cmほどの長さにカットする
これが、上の写真に写っている色棒です。
色ガラスをどのように被せているのかは、完成したパーツから想像してみて下さい。
1色ずつ順番に、竿元から先端へデローンと垂らしているのですが、用意したすべての色で透きガラスをちょうどいい感じに覆い隠すのには少々のコツが要ります。
一度の作業で20〜30個のパーツが出来るでしょうか。
(あらかじめパーツを作るのではなく、細いケーンを直接つけてしまえば早いだろうと思われるかもしれませんが、そのような方法だと泡が入りやすく、歩留まりが極端に悪くなります)
上のようにして作ったパーツを、ピクチャー(ガレージ、電気炉)で暖めて作業に備えます。
以下は、パーツを使ってマーブル模様を出すまでのプロセスです。
1) 吹き竿に透きガラスを薄く巻く(5mmほど)
2) ピクチャーの中のパーツをトングでつかんで吹き竿の先端につける
3) あぶって柔らかくする
4) パーツの先端を摘まんで竿を回転させ、縦縞を横縞に変える
5) あぶって柔らかくする
6) 千枚通しで横縞を引っ掻く
7) あぶり返して表面をツルツルにする
8) 透きガラスを巻いて香水びんやグラスの形に吹く
どうでしょう。
イメージできたでしょうか。
4) の「縦縞を横縞に変える」というのがわかりにくいかもしれません。
ベンチに座って吹き竿をレールに乗せると(つまり、いつもの作業体勢ですが)、その時、吹き竿の先端には写真に写っている棒状のパーツが、竿を延長するような状態でついています。
あぶり返して柔らかくなったパーツの先端をピンサーで摘まみ、そのまま竿をレールの上で転がすとパーツがよじれます。
回転を加えることで、幅広の縦縞だったパーツは、ネジの溝のような細かい横縞になります。
そこで、6) の作業になるのですが、この横縞になったパーツを、千枚通し(尖った金属の棒)で引っ掻いて模様を変化させるのです。
この作業が「マーブル」なのです。
マーブルとは大理石のことですが、われわれがイメージしているのは「マーブルペーパー」のことです。
皆さんはマーブルペーパーを知っていますか。
昔からヨーロッパで製本に使われているカラーペーパーの事で、水の上に浮いた油性の絵の具を引っ掻いて模様を作っています。
その雰囲気に似ていることから、われわれはS3のシリーズを「マーブル」と呼んでいるのです。
今風に言うなら「ラテアート」ということになるのでしょうか。
珈琲の上に浮かべたミルクを棒で引っ掻いて、ハートやら矢羽根の模様を描くものです。
田舎者ですから現物を見たことがありませんが(笑)
われわれが、どのように引っ掻いて模様を描いているのかは実物を見て想像してください。
一個一個かなり違っています。
そして、手に取った作品を、そのままレジに持っていっていただけたなら、このエントリーを書いた甲斐もあったということになるのです(笑)